2010年度版 TACE不応の定義を考える

監修のことば

村上 卓道先生

村上 卓道先生
近畿大学医学部
放射線医学教室
放射線診断学部門 主任教授

TACE不応の定義

  1. 肝内病変
    1. TACEを適切に施行したのにもかかわらず、直後(ただし、1ヶ月以後)の治療効果判定のCTにてリピオドールの沈着が不良(50%以下)の場合が2回以上続く
    2. TACE施行後(ただし、1ヶ月後)の治療効果判定のCTにて新病変が多数出現する場合が2回以上続く
  2. 脈管浸潤の出現
  3. 遠隔転移の出現
  4. 腫瘍マーカー
    一過性の低下のみで上昇傾向が続く
日本肝臓学会編:
肝癌診療マニュアル第2版

TACE(肝動脈塞栓化学療法)は、1980年代初頭に我が国において開発された治療法であり、肝細胞癌のIntermediate Stageにおける標準治療となっている。特に我が国では、画像診断技術やカテーテルなどの医療材料、手技の画期的な進歩により、区域・亜区域レベルのTACEが標準的に多くの施設において高頻度に施行され、治療成績も、海外と比べ誇るべきものとなっている。
一方で、TACEによる治療に対する詳細な方針(使用薬剤、塞栓の程度、TACEから次の治療へ移るタイミング等々)は、それぞれの施設や治療を行う科によって異なっており、さらには各医師ごとの独自の判断にゆだねられている場合があるといっても過言ではない。TACEは、繰り返すうちに、徐々に治療抵抗性の病変が出現したり、肝予備能を低下させることが経験的に知られている。これまではTACEの明確な後治療が存在せず、TACEを過度に繰り返すこともしばしば見受けられた。しかし、2009年に分子標的薬であるソラフェニブが発売され、TACEが効きにくくなってきた段階での治療選択肢も増え、TACE不応のタイミングを見極め、患者の肝予備能が保持された段階で次の治療ステップに移る必要性が議論されるようになってきた。
このようなことから、日本肝臓学会における2010年の肝癌診療マニュアルにおいて、上記のTACE不応の定義が提唱されることになった。

この定義自体は、マニュアルにも記載されているとおり、暫定的なものである。一つの目安としては、極めて妥当であると考えるが、実地診療においては、腫瘍の個数や、形態、位置、供給血管の状態、薬剤の使用経験、TACE施行医の考えといった様々な要因に基づいてTACE不応が判断され、その後の治療が決定されている。
そこで今回、実際にTACEを多数例施行されている専門の先生方に、それぞれのTACE不応に対する考えや、後治療としてのソラフェニブの使用意義等についてお話を伺うことを企画した。
実際に臨床の第一線でTACEを行っていらっしゃる先生方が、どのようにTACE不応をとらえ、どのような治療を行っていらっしゃるかを紹介することによって、当サイトを視聴される先生方の日々の臨床現場での治療方針のご参考になれば幸いである。

各先生方が考えるTACE不応の定義について

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